最後の一夜が授けた奇跡

私は新しくいれた紅茶をトレーに乗せて、再び社長室に入った。
「お待たせいたしました」
私が紅茶をお客様の前に出すと、お客様は私の方を見た。

「覚えて頂戴ね?私はコーヒーじゃなくお紅茶がいいの。これから頻繁に出入りすることになると思うから。覚えた?」
明らかにこの人は秘書という存在をバカにしている態度だ。

「お紅茶ですね。承知いたしました。」
私は愛想笑いを浮かべながらその女性は言う。

「私のこと、覚えてね?」
「はい」

言われなくてももうしっかり覚えた。

「彼女は有能な秘書です。わざわざ言葉にしなくてももう覚えてますよ」
律樹が鋭い視線をその女性に向けて言う。