大きな窓からはきれいな夜景が見える。
窓の前に立ち、その景色を見ている私を後ろから抱きしめて、私の肩に律樹はあごをのせる。

「なんか、まだ実感わかないな」
「ん?」
「こうして俺がここにいること」
生まれた時からこのデパートの社長となることが決まっていた律樹。
そのために大学も経済学部を卒業して、この会社に入社した。

入社してからは数年に一度部署を変えながらデパートの社長として必要な現場の経験を積んできた。


そして・・・

入社して10年が経ち、つい先日正式に社長として就任をしたのだった。

律樹のお父さんはそれを機に、都内に広い敷地を購入し、律樹のお母さん、つまり奥さんと二人引っ越しをした。今も経営に関しては理事長としていろいろと関わっているが、律樹にほとんど任せている。
同時に律樹はこの広すぎるデパートビルの最上階に一人暮らしを始めた。