最後の一夜が授けた奇跡

「季里に怒られるかもしれないけどさ、親父のことちょっと脅したんだよ。季里の前でも言っただろ?社長なんて地位もいらないって。」
「・・・律樹・・・」
「もちろん本心じゃないさ。俺は季里も、今の地位も手放す気なんてない。」
「・・・」
律樹は微笑みながら私の涙を拭う。

「季里の妊娠がわかってすぐにマスコミに公開するって言ったんだ。」
「律樹・・・」
都内の一等地にあるデパート【ASAKAWA】。それなりに世間の注目を集めている。まして、最近社長が変わったばかりで世間を騒がせたばかりだ。
「そしたら交換条件を出された。」
「・・・交換条件?」
「違うな。ダメの一点張りじゃなくて、交換条件を出してもらえたんだ。」
知らない話が律樹の口から聞こえてくる。

私はその話にくぎ付けになった。

「今うちのデパートで売れ行きの悪い店舗が5店舗ある。」