「おかえり」
私の部屋に入ると律樹は私の体を抱きしめた。

「ただいま」
大きな背中に手をまわして抱き着く。

「疲れただろ。着替えて休んだほうがいいな。」
そう言って私から離れようとする律樹の背中に回している手に力を込めて、私は離れられないようにした。

自然と涙があふれる。

こんなにも今そばにいて、こんなにも一緒にいると心満たされるのに・・・

律樹は私の知らないところでどれだけ大変な思いをしているんだろう・・・

いっそ私の前でつらい姿も見せてくれたらいいのに。

大切な律樹の持っている物すべて、私が奪ってしまうかもしれない・・・

この人に、本当の幸せをあげられない。