ふと後部座席の方を見ると、そこにはたくさんの書類や本、律樹のスーツが重ねられていた。
いつもは荷物という荷物を積んでいない律樹の車。

会社に戻る余裕がなく、車にすべてつぎ込んでいることがわかる。

私は見て見ぬ振りができなくて、律樹を見た。

真剣な顔でハンドルを握る律樹。
私の体を気遣ってかなり安全運転をしてくれている。

「平気か?」
数分に一度、必ず私の体調も確認をしてくれる。
「大丈夫」
その度に心がちくりと痛んだ。

「少し寝てもいいぞ?これから少し動かないとならないから」
「・・・うん」
私は律樹に気づかれないように窓の外を見ながら目を閉じた。
その時に涙が流れてしまったことは律樹には内緒だ。