最後の一夜が授けた奇跡

「今の彼を見た?」

私と会う時の律樹は仕事の話などしない。
辛いことや大変なことを話しをしない。

ただ私の体を心配して、私の話ばかり。

「朝から晩まで走り回って、いろいろな人に頭を下げて、睡眠時間を削って仕事をしているのよ。まぁ、私の父を怒らせてしまったのが原因だけど。私が何を言っても父は彼を責める姿勢を変えないわ。だって、【ASAKAWA】のために、うちもかなり譲歩してきてる。経済的にも支えてきているのに、それを裏切っているんだもの。」
「・・・」
「あなたがそうさせたんだけどね。」
「・・・」

何も言い返せない。

うんん。私には言い返す権利すらない。