最後の一夜が授けた奇跡

まだ足元のふらつく私の腰に手をまわして、支えながら律樹は車まで連れて行ってくれた。

「ありがとう」
車に乗り込んだ私にスーツのジャケットを脱ぎ、お腹にかけてくれる律樹。

「もう少し席倒すか?」
あれこれ気を使ってくれている。
シートベルトまでしてくれた律樹。

元から安全運転だった律樹。
でも、いつも以上にブレーキのかけ方もハンドルの切り方も気を使っていることが分かった。

何年も座ってきた助手席。

免許をとりたての頃、ハンドルにかじりつくように運転していた律樹を思い出す。

あの頃はまだスーツなんて着ていなかったのに。
今ではすっかりスーツ姿に見慣れてしまった。