最後の一夜が授けた奇跡

「理事長のこと、ごめん。」
優しく穏やかな口調で話をする律樹。
私はそんな律樹を見ることしかできない。

「俺、ちゃんと理事長にも認めてもらえるように、認められる結果を出すまでは季里とのこと・・・進められないって思ってた。」
「・・・」
「季里を不安にさせてごめん。待たせてごめん。こんなにつらい思いさせて本当にごめんな。」
辛そうな瞳に律樹の複雑な想いが見えた。

律樹の気持ち、ちゃんとわかっている。

律樹は言葉だけじゃなく、行動で、結果で私への想いを表そうとしてくれていたんだ。

どれだけ律樹が必死で成績をあげようと努力していたか、私はよくわかっている。
会社にいる時間以外にも家でも律樹は仕事をしながら、社長に就任したばかりなのに、あれこれと利益を上げようと努力をしていた。

あの夜以来、律樹の目の下にはクマがいつもできていて、少しやせたことに、私は気づいても、気づかないふりをしていた。