うん、とひと言。
声を落とした相手と自分の温度差がみじめ。
「今日、一緒に行かないって言ったのに」
「途中で誘拐とか事故とかに遭ってみろ。ぜんぶね、俺の責任になんの」
「下校のときは放任のくせにテキトーなこと言わないで」
「下校だけは別にしてって頼んだのお前なんだけど。忘れた?」
「……」
それを言われると黙るしかない。
下校を別々にしたいって言い出したのはあたし。間違いない。
1年生のときから生徒会に入ってた利人は、忙しくてもあたしと一緒に帰るために、休み時間とか昼休みを削ってシゴトをこなしてた。
終わらなかったシゴトは、家に持ち帰ったり……。
放課後、あたしを待たせないようにって先輩たちに頭を下げて会議を先に抜けたり。
利人はあたしに文句一つ言わなくて、それどころかいつも「待たせてごめん」って言うから……。
絶対無理してるって思ったの。
あたしのために無理してるのがどうしても嫌で、見たくなかった。