3限目が終わって保健室に向かったら、なゆはもういなかった。


起きてひとりで教室に戻ったのか、早退したのか。

連絡を取ろうにも、なゆの父親にスマホでのやり取りすら禁止させられたから迂闊な行動はできない。


どんな形でバレるかわからないのが怖いところ。



俺はどんなに怒られたって構わないけど、なゆのち父親の信頼を欠いてしまったのはかなり痛い。


どうにか謝罪して信頼を取り戻さないと、一生なゆのそばには置いてもらえないかもしれない。



「なゆちゃんなら、さっき乃亜ちゃんが付き添って教室に戻ったよ」



斉藤新が、1時間前と同じようにやってきた。

俺がなゆの様子を見にここへ来ることを知っていたから、わざわざ寄ってくれたらしい。



「そう。ならよかった」

「会わなくていーの? 学校でふたりのことを見張るように言われたのはオレだから、ちゃんと黙っておいてあげるよ」


「いいよ。斉藤のほかにも監視役が誰かいるかもわかんないし」

「それにコイツのことも信用しきってないし、ってカオしてんねぇ」