健康優良児だったあたしは、保健室って場所にあんまり来たことがない。
その“あんまり”の中のぜんぶが利人の付き添いだったりする。
それももうだいぶ前の話。
古文で言うと、『今は昔』ってやつだよね。
自分がベッドで休む側になる日が来るとは、思わなかったな……。
少しずつ眠りから冷めて、ぼんやり考えていたときだった。
白いカーテンの向こうから話し声が聞こえて、その片方が利人のものだってわかった。
1週間近く顔すら見れてなかったから、心臓が跳ね上がった、──────のも、つかの間。
「それでなゆちゃんのことはどーなの?
土屋としては」
尋ねる声と、
「見合いがうまくいって、早く結婚してくんないかなーって思ってる。……そしたら俺も楽になるから」
……答える、声。
これこそ、わるい夢なんじゃないかって。
話が終わると、ひとりが出ていく気配がした。
もうひとりの足音がこっちち近づいてきて、どうしてか利人のほうだってわかった。