ひとりで出て行ったなゆを引き止めようと、遅れて俺も廊下に出る。
すでに姿は見えず、慌てて階段を駆け下りた。
けど1階の昇降口に着いてもいなかった。
靴箱の中を確認して、ローファーがあることを確認する。
まだ帰ってない……
だとしたらどこに。
また妙な焦りが襲ってくる。
なゆのことになるととにかく気が休まらない。
ため息を吐きかけたときだった。
「っえ、利人……?」
背中に困惑したなゆの声がぶつかった。
「利人なんで……さっき放送で呼び出されてた、」
「お前こそなんで俺より先に出たくせに後ろからくるんだよ」
「ちょ、っと、トイレに……」
慌てたように俯くのは、赤い目元を隠したいからなんだと思う。
……結局泣いたのか。
「とりあえず帰るよ、なゆ」
「え?」
「早くローファー履いて」
「でも、生徒会のおしごと……」
「お前が “利人はなゆと帰るの!" って言ったんだろ」
なぜかどんどん壁側に退いていくなゆの手を強引に引き寄せた。