利人が本気であたしを押し返そうと思えば、とうぜん力に敵うわけはなくて。



「……あ、」


泣くのは我慢…思って、とっさに笑おうとしたけどうまく作れなかった。

すごく傷ついてます、っていう情けない顔が利人に晒される。


でも、また泣いたって呆れられるのがこわくて、涙だけは必死に必死に耐えた。



あたしを見下ろす利人が、いま何を考えてるのかわからない。


沈黙の中、ピンポンパンポーン、と音が鳴って、生徒を呼び出す先生の声が聞こえてきた。


結局なにも言えそうにないあたしは、
今だ、と身を翻す。



「……、利人にしかこんなことしないのにな」



相手には絶対に聞こえないボリュームで零して、空き教室をあとにした。