「ほんとですよー。だから、ちゃんと土屋くんが褒めてあげないとだめなんです。褒めてあげるためには、ちゃんとなゆのこと見てあげないとだめなんですよ。それに……」
ふと、まぶたを伏せて。
言うのを躊躇うように目を泳がせる。
「それに……なんですか?」
催促しても、なゆの友だちは口をつぐんだまま。
さっきとは違って思い詰めたような表情に不安を覚えて、相手の顔を覗き込む。
「乃亜さん?」
「……、土屋くん、今日は女の子との約束ありますか?」
「……は?」
いきなりなんの話かと驚いた。
「約束がなかったら、放課後くらいは、なゆのこと、ちゃんと教室まで迎えに来てあげてください」
それじゃあ、と背中を相手は向けて去っていく。
その言葉の本当の意味を、俺はまだわかっていなかった。