うわっこれマズい状況。
唇を噛んで、おもむろに利人の胸板を押し返したら、それが気に入らなかったのか、あたしの手を邪魔だと言うように振り払った。
じっと睨んでくる。
腕が再び背中にまわったかと思えば、雑に抱き寄せられる。
目の前にはピンボケした利人のネクタイ。
近!!
「利人くーん?」
と、もう一度アヤノさんが呼びかけるけど、利人はだんまり。
諦めて帰ってくれるかと思ったのに、少ししたらまた別の人の声が聞こえてきた。
「アヤノせんぱーい、会長いないんすか?」
男の子、たぶん1年生。
扉を隔てた向こう側で繰り広げられる会話に心臓の高鳴りは最高潮。
そんな中、なにを考えてるのか利人が、背中をつーっ…となぞってくるから。