心配になって顔をのぞきこむと
ふいっと背けられる。
でも、隠されたら知りたくなるのが人間のサガだと思うの。
好きな人のことは、特に……。
「利人、」
今度はあたしから手を伸ばす。
影を落としてる前髪をさらりと斜めに流してあげると、伏せられていた目がこっちを向いて。
──────ドキリ。
一瞬、あたしを見るその目が、切なく揺れたように見えた。
だけど次の瞬間には、なにかを憂いた表情は面影もなく消え去ってて
瞬きをするとそこには、いつもの無駄に整った顔があるだけ。
はい、なに?とでもいいたげな目で見てくる利人。
どうやら、あたしの見間違いだったみたい。
利人の前髪に触れてるせいで距離が近い。
じっと見つめられて、手を離すタイミングを見失ってしまった。