その後医者が来て、身体の状態の説明がされた。俺が助かったのは奇跡的らしい。
当分は休んで身体を治し、状態が良くなってきたらリハビリを始めるということになった。話が終わり、医者が病室から出ていくと入れ替わりで奈緒が入ってきた。
「待ってたんだ」
「...当たり前でしょ」
俺が目覚めた時の叫んだ声に比べて、今の声はとても落ち着いていた。
「心配した?」
「...心配したに決まったんじゃん」
奈緒はまた涙を浮かべる。
「もう目覚めないかと思った...」
「そっか...。でも起きたよ」
「うん...」
「俺、夢を見てた気がするんだ」
「夢?」
「奈緒と遊んでる夢。でも途中で奈緒が泣いてる声が聞こえてきて...。帰んなきゃって思ったら目覚めた」
奈緒は驚いた顔で俺を見る。
「奈緒が俺を連れ戻してくれた。ありがとう」
俺の言葉に、奈緒はまた大きな声で泣き出す。
「お、おい...静かに...」
「助けてくれてありがとう。ありがとう」
俺の手を握りながら、ありがとうと言い続ける。
「私のせいで蓮都が死んじゃったらどうしようって怖かった。生きてて良かった...本当に良かった...」
「...うん」
俺は奈緒を助けるためなら、自分がどうなっても良かった。それでも奈緒に生きてて良かったって言ってもらえるなら、助かって良かったと心から思った。
「奈緒...笑って」
俺がそう言うと、奈緒は服の袖で涙を拭い、笑顔を作った。その笑顔に俺も笑顔を返した。