ちょうどその時目の前にいたのは奈緒と真白先輩だった。
「あれ?蓮都?」
「奈緒...」
「あっ紫乃もいる!それと...」
「由香だよぉ〜」
「由香さん?ヨロシクね。えーと、3人でお出掛け中?」
「私と天樹くんが偶然会って、その後由香ちゃんと会って今一緒にいるって感じかな」
「なるほど...。先輩、こっちにいるのが幼馴染の蓮都であと友達の紫乃。由香さんは初めまして...だね」
「初めまして〜」
「こんにちわ」
真白先輩は温かい笑顔で俺たちに挨拶をする。俺たち3人も挨拶を返した。
「それじゃあ私たちはこれで...」
「う、うん。またね奈緒ちゃん」
「またね〜」
そして奈緒と真白先輩は遠くへ歩いていく。スカートを履いたいつもよりオシャレをしている奈緒の姿、真白先輩と並んで歩く奈緒の姿が俺の心を痛めた。
好きな子が他の男といる所を目の前にしても何も言えず、ただ立っていることしかできなかった。結局俺は奈緒の手を引くことも振り向かすこともできない男だということを再認識し、自分を嘲る。
「あ、あの、由香ちゃんを家まで送り届けよう」
香坂さんは俺の手に触れながらそう言ってきた。俺が奈緒のことを好きだと知っており、呆然と立ち尽くしていた為声をかけたのだろう。
「...うん、行こっか」
「わぁ〜い、ありがとう2人とも」
そして3人で由香の家まで行き、無事由香が家の中に入ったことを確認した。その後香坂さんとも別れ、一人で歩く帰り道となった。
心は淋しいというのに、温かい風が俺のそばを吹き抜けていった。