「急に雨の中走っていって三つ葉持ってこられたからビックリしたよ」
「焦ってたんだから仕方ないだろ」
せめて四つ葉だったら良い感じにできたかもしれないが、いざという時にキメられない所も俺らしいと嘲笑った。
「引っ越したばっかだったり誕生日に一人だったりで淋しかったけど蓮都が来てくれて嬉しかったなぁ」
小さく呟く奈緒。その顔がとても幸せそうで嬉しくなった。
「...奈緒が淋しいときは傍にいるよ」
俺の言葉に奈緒は驚いていた。
「な、なんだよ」
「いや、なんか蓮都がそんなこと言うなんて...」
「言っちゃダメなのかよ」
「ううん。ありがとう、嬉しいよ」
そう言って笑顔を見せた奈緒は空を見上げる。
「雨止んできたね」
俺も空を見ると雨は弱くなり、もう帰れる天気になっていた。
「じゃあ行こっか」
奈緒は立ち上がり歩き出そうとする。
俺は離れそうになる奈緒の手を掴んだ。
「日曜日、いくなよ」
言うつもりはなかった言葉。しかしその言葉は流れるように俺の口から出ていた。
奈緒はまた驚いた顔をした後、ふふっと笑った。
「本当今日は蓮都らしくない」
困ったような淋しいような顔をしてそう言ったと思ったらすぐに奈緒はいつもの笑顔になる。
「大丈夫だって!先輩と上手くいっても蓮都と遊ぶし、大切な幼馴染みってことには変わりないから」
満面の笑顔で言われた俺は言葉を返すことができなかった。
奈緒は前を向いて歩き出す。
「俺らしいってなんだよ...」
俺は奈緒に聞こえないように小さくそう呟いた。
空を切る俺の手はとても冷たく感じられた。