放課後になり、俺と奈緒は並んで帰っていく。
「それでね、ちょっとボケーっとしながら走ったらぐきぃってやっちゃったんだよねぇ」
奈緒は足を捻った時の様子を話す。笑いながら話している為痛さはそこまででもないだろうと思えた。
「...どうせ日曜に先輩と出掛けるから浮かれてたんだろ」
どこか冷たい嫌味な言い方をしてしまった。しまったと思った俺に対し奈緒はにゃははと笑う。
「そうなんだよねぇ〜。あと数日で先輩と出掛けれるんだって思ったら思うように体が動かなくて」
前を向きながら話す奈緒は俺の顔を見ることなんてない。でもそれで良かったと思った。今顔を見られたらきっと泣きそうな顔になっているから。
「そんなんで大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫だよ。せっかくアピールできるチャンスなんだから...」
「...奈緒は奈緒のままでいたらいいよ」
俺の言葉に奈緒は一度ビックリした顔をし、その後朗らかな顔をした。
「やっぱ蓮都と話すと安心するね。うん、ありがとう」
その言葉に嬉しくなり笑みが溢れてしまった俺は手で口元を隠す。
そんな時に雨粒が数滴落ちてきた。
「あれ、雨?」
「今日降るって言ってたっけ?」
「通り雨かも。蓮都、こっち」
奈緒は俺の手をとり走っていく。また俺の心が高鳴った。