俺がそう聞いた瞬間、屋上の扉が勢いよく開いた。
「あー!由香ここにいたー!」
「あっ紗良ちゃん〜」
呑気に手を振る由香に怒り気味に近づいてくる女の子。彼女は由香の肩に手を置くと大きく息を吐いた。
「教室で待っててよね?1人じゃどこにも行けないでしょ?」
「えへへ〜ごめんね」
「もう〜...。それでこっちの人は?」
「蓮都くんだよ。今お話ししてたの〜」
「ネクタイのラインが青ってことは同じ一年か...。ありがとうね。この子すごい方向音痴で1人だと何処に行くか分かんなくて心配だったから蓮都くんが一緒にいてくれて助かったよ」
方向音痴にも程度というものがあるだろうと思ったが、それは声に出さなかった。
「いや、俺も話せて良かったから」
「それなら良かった。私は紗良。ヨロシクね」
「あぁ、よろしく」
「じゃあ私たちはこれで。由香、行こっか」
「は〜い」
2人は並んで歩いていく。すると由香が振り向いた。
「蓮都くん、またお話しようね〜」
「あぁ」
そう答えると由香は嬉しそうにし、手を振ってきた。俺は彼女に手を振り返す。するとまた嬉しそうに笑い、校舎の中へ入っていった。
「なんだったんだ...」
1人になった屋上で俺は小さく呟く。そんな俺の傍を風が吹き抜ける。
急に俺の前に現れ、訳がわからないまま去った由香を風みたいな人だと思った。