「ジェルメーヌさん、ありがとう!!」

フローラは微笑むジェルメーヌにそう言い、顔を真っ青にしている青年に向かって走っていく。そして手にしっかりと握っていたナイフが青年の腹部に刺さった刹那、青年はおぞましい悲鳴を上げる。

青年の体から黒い光が飛び出していき、フローラの意識は暗闇に飛ばされた。



フローラが目を開けると、目の前にあったのは華やかな舞踏会ではなく裏路地だった。夢だったのかと思ってしまったが、着ているのは地味は服ではなく破れたドレスで、悪夢ではないと嫌というほど教えられる。

「服を買って着替えないとね……」

フローラはポツリと呟き、歩き出す。フローラのいた足元にはあの時投げ捨てられたティアラと、誰が書いたのかわからない「愛している」と文字が書かれた紙があった。