「ツカサひさしぶりー!!」

男は走ってきて、秌場くんにハグをした。

「クロエさん、どうも。
お久しぶりです。」

「見ていない間にまた可愛くなったんじゃない??」

「そうでしょうか。」

「そうそう。
って、リテアはまた僕のいない間にツカサを独り占めしてたのね?」

「ツカサはりぃのだもん。」

「だめよ。僕の方が歳上だし偉いんだから。」

「そこのユナっていう子にくっつけばいいじゃない。クロエは女の人なら誰でもいいんでしょ?」

「そこの子は可愛さが足りないわ。
いけ好かない顔してるし。」

悪かったな。

というか、この人、さっきまでとは話し方だいぶ違うな。

「河津さんは可愛いと思いますよ。」

「うーん、まあツカサがそう言うなら可愛いのかもね。でも、ツカサは僕のフィアンセなのよ?他の子に可愛いっていうと妬いちゃう。」

「勝手にツカサをクロエのフィアンセにしないで!将来結婚するのはりぃなんだから!」

「将来って何年後よ?
あと10年以上も先の話でしょ。
おとなの僕には敵いっこないよ。」

「僕はリテアさんもクロエさんも大好きですよ。だから、仲良くしてくれると嬉しいです。」

年齢とかの問題は置いといても
一夫多妻みたいな状況はな...。

「あ、追いついた。
秌場くん、大丈夫?」

「大丈夫ですよ。」

「河津さんも問題ないみたいだね。
さっきはこの人、河津さんのにおいに反応してたみたいだけど、比較対象が秌場くんならまあこうなるか。」

「なんでクロエはツカサも好きなの?
ツカサは男の子なのに。」

「それはツカサが可愛いからよ。
そんじょそこらの女の子とは輝きが違うの。

まあ、その子もその子で悪くないものを持ってるみたいだけど、ちょっと主張が薄いわよね。その胸に付けてる宝石ちゃんに負けてるわ。って、これツカサのよね?」

「河津さんに差し上げました。僕より河津さんの方が似合いますから。」

「そう。なんだか結構残念なことしちゃってる気がするけど、ツカサがそう決めたんなら文句は言えないわね。」

「確かに、人間は礼儀など大事にしますし、外見に気を配ることも大切なのかもしれませんが、河津さんは内面からとても綺麗ですし、笑顔がとっても可愛いですよ。」

「そうなの?
まあ、ツカサがそういうと可愛く見えてこないでもないわね。

ツカサは、この子のことが好きなの?」

「はい。」

はい、って...。

なんか普通の人だと誤解しちゃうよな...。

ただただ素直な悪魔なんだろうけど。

そんなそばで、

「これで秌場くんにくっつく虫も多いことが分かったでしょ。」

って安澄が。

「秌場くんは魅力的だけど、だからこそ危ないんだよ。
俺たちはまだそれに邪魔されて彼を手にかけることができないでいる。」

「手にかける?」

「害悪しかない突然変異は排除したほうが
安全でしょ。

元は、
ころす
ことができた人間の頃から、上層部は彼を排除するために動いていたそうだよ。

でも、詰めが甘かった。
いや、そのときから彼に魅了された者がいたんだろうね。俺の親も結局はそうだった。」

「親...?」

「まあ、親っていうのはちょっと人間寄りに近づけた言い方だよ。
でもまあ、血縁関係にも家族関係にもあったからね。父、母と呼んでる。

でも、父母はそんな不祥事が原因でお縄をくらった。ちょっとだけ迷惑な話だよ。」

「それを、なんで私に...?」

「秌場くんのこと気に入ってるみたいだからさ。もしものことがあったら申し訳ないなって思って。」

「え...?」

「まあ、俺と秌場くんは友達だからね。
簡単に友達を裏切るようなことをしたらモラルってものに反するから気をつけるけど。
じゃ。」

そう言って、安澄は家の方向に歩いていってしまった。

なんだったんだろう。