「おかげで俺の試練はお前になっちまった」
彼のふわふわとした黒髪が風に揺れている。
深紅の瞳でじっと見つめられ、何も言えなくなってしまった。
動けない私を見て深いため息をついた後、彼は立ち上がった。
よくよく見るとうちの制服の学ランではなく、黒い布のような服を纏っている。
私も立ち上がり、スカートを払いながら辺りを見回した。
無残にも散乱したゴミたち。
先ほどと同じ光景に肩を落としつつも再びゴミ拾いを始めた。
彼は不思議そうにそれを眺めている。
「暇なら見てないで手伝ってくれませんか」
あなたのせいなんだから、という言葉をなんとか呑み込み、
出来るだけ低い声で文句を言うと、彼は小首を傾げた。
「この散らばってんのをそこに入れりゃいいのか?」
「見て分かるでしょ」
動く気配のない彼に多少苛つきながらも頷く。
彼はにんまり笑った後、人差し指を立てた。
「お安い御用」
彼が人差し指をくるっと回すと、散らばっていたゴミたちがやわらかく空中に浮き、
私の足元にあるゴミ箱へと一気に収まった。
予想外すぎる出来事に目を丸くする。
「やっぱあんまり力は出ねぇな」
困惑する私をよそに、彼は手を開いたり閉じたりして何やら一人で呟いている。
