三月も四週目に入った。あと一週間ほどで両親も帰国という日、修二とまりあが私の職場に顔を出した。
といっても、遠目でこちらを伺っているだけだったけれど。私が気付くとふたりは手を振り、自宅に向かって歩いて行った。
よかった。まりあが泣いたりしなくて。大丈夫そうだから、寄ったのだろうけれど。
すると、私の背後でぼそっと佐富くんが言った。
「今の、店長の娘さんですよね。ベビーカーを押してた人って誰ですか?」
ぎくりと振り返ると、声と同様に面白くなさそうな顔の佐富くん。どうやら見られていたようだ。私は困りつつ、開き直って言った。
「まりあの父親よ。うちの親が旅行中でね。お迎えだけ頼んでるの」
「へえ」
佐富くんは不機嫌そうに返事した。うう、なんでそんなぶすっとした顔をするのよ。もう会わないとか言って利用してる私がズルく見えた? 若者には大人の汚い部分に思えたのかな。
「仲いいんですね」
「仲良くはないけど、あの人もまりあと会う権利はあるからね」
「認知もしてないのに」
阿野さんあたりから聞きかじったのだろう。私は佐富くん本人に言ってはいない。そして、認知を断っているのは私だ。
……って、修二を庇うような思考になってしまうのはなぜだろう。
「さ、うちのことはいいの。仕事仕事」
私は佐富くんを追い立てて店舗内に戻った。
といっても、遠目でこちらを伺っているだけだったけれど。私が気付くとふたりは手を振り、自宅に向かって歩いて行った。
よかった。まりあが泣いたりしなくて。大丈夫そうだから、寄ったのだろうけれど。
すると、私の背後でぼそっと佐富くんが言った。
「今の、店長の娘さんですよね。ベビーカーを押してた人って誰ですか?」
ぎくりと振り返ると、声と同様に面白くなさそうな顔の佐富くん。どうやら見られていたようだ。私は困りつつ、開き直って言った。
「まりあの父親よ。うちの親が旅行中でね。お迎えだけ頼んでるの」
「へえ」
佐富くんは不機嫌そうに返事した。うう、なんでそんなぶすっとした顔をするのよ。もう会わないとか言って利用してる私がズルく見えた? 若者には大人の汚い部分に思えたのかな。
「仲いいんですね」
「仲良くはないけど、あの人もまりあと会う権利はあるからね」
「認知もしてないのに」
阿野さんあたりから聞きかじったのだろう。私は佐富くん本人に言ってはいない。そして、認知を断っているのは私だ。
……って、修二を庇うような思考になってしまうのはなぜだろう。
「さ、うちのことはいいの。仕事仕事」
私は佐富くんを追い立てて店舗内に戻った。



