「指のサイズ、変わってないといいんだけど」
「修二、これは……」

修二は微笑み、コーヒーカップをソーサーに戻した。

「陽鞠、俺と結婚してほしい」

ぬけぬけと言う言葉に、私は凍り付いた。
結婚? 親権とか認知なんてものじゃない。想像の斜め上だ。

「私と復縁したいってこと?」
「そうだ」
「私たちの関係は、三年前に壊れてるのよ」

ほんの二週間前に再会したばかりでいきなり復縁だなんて急すぎる。それとも、修二はずっとこのことを考えていたのだろうか。
私との喧嘩別れについて後悔してくれていたのだろうか。

「一番の理由はまりあだ」
「へ?」
「まりあの成長をどうしても近くで見ていたいんだ」

修二ははっきりとそう言った。

「まりあが小学校に上がるのを見たい。中学受験は勉強を見てやりたい。休みの日は一緒に遊びたいし、いつか嫁に行く日は笑顔で見送りたい」

力強く語る修二。私は完全に置いてけぼりだ。

「そのために、陽鞠とやり直したい」

えーと、つまりは、まりあを手に入れるために私と復縁したいと。
そういうこと?

「まりあと実際会って、そう思ったの?」

私は感情のこもらない声で尋ねる。修二は頷いた。

「ああ、愛おしい存在だと気づいた。あらためて実感した。まりあと離れて暮らすのは一日だってつらい」