身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています

イタリアンのお店は白く塗られたウッドデッキのついたレトロで可愛らしいお店だ。女の子の好きそうなお店をよく知っていること。
ちょっと意地悪な気持ちで、案内された個室に入る。修二はすでに待っていた。カジュアルなジャケットにカットソー、チノパンという出で立ちだ。

「陽鞠、まりあ、今日はありがとう」

にっこりと笑う修二は、すでにまりあに会えた喜びでいっぱいだ。その笑顔を疑り深く見てしまう私。

「ぱあぱ!」

まりあが早速てちてちと走っていき、修二に飛びついた。修二も準備万端、しゃがんでまりあを抱きとめる。

「まりあ、今日も世界で一番可愛いなあ」

その点だけ同意だ。まりあは世界で一番可愛い。

「まずは食事にしないか。まりあはお腹が空いているだろう」
「ええ、まあいいけど」

何の話かしらないけど、食べながら話した方がいい。まりあは空腹を我慢できる年齢じゃないし、お腹が空いてからじゃ遅い。

パスタをメインにサラダとスープ、デザートとコーヒーがついたセットを頼んだ。まりあ用に柔らかめに作ってもらったパスタを、持参の麺類カッターでカットする。

「便利なものが売ってるんだなあ」

修二が感心して見ている。

「これはお出かけ用ね。家ではキッチンばさみでなんでも切っちゃうわよ」
「持ち歩き用のお菓子ケースとかもあるんだってな」
「うちはなんでもジッパーバッグかな。あとは、ノンアルコールのおしりふきがひとつあれば、ウェットティッシュにもなって便利だし。結構あり合わせのもので育児できちゃうのよね」

私たちには目もくれず、目の前のスパゲッティを無心で口に運ぶまりあ。