身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています

二月半ば。
寒い風の吹く夕方六時、私は路上で困り果てている。

「まりあ、まりあちゃん駄目よ」

目の前には大の字にひっくり返ったまりあの姿。保育園の帰り道、抱っこは嫌だと自分で歩き出したものの、歩くことに飽きてこの態勢だ。

「やらのよ。らっこやらのよ」

もう一度抱っこ紐に戻そうとすると怒る。じゃあ、歩こうと誘っても動かない。
どうせえっちゅーねん……と思わず偽の関西弁が出そうになる。

「まりあ、帰ってごはんだよ。まりあの好きなめんめんあるかなあ。ばあばがうどんめんめん作るって言ってた気がするなあ。早く帰って食べようよ」
「らっこやらのよ。まま、あっちいけ」

だからさ~。それが困るんだけどな~。だって、歩いてもくれないわけでしょ~。
無理矢理抱っこ紐に入れて帰ればいいのかもしれない。だけど、明日から抱っこ紐は嫌だと言われてしまうと困る。それに、小柄とはいえ、二歳半のまりあに三歳までしか使えない抱っこ紐が若干小さくなってきたような感覚はある。大暴れして落っこちたらどうしよう。
やっぱりベビーカーか前座席付きの自転車の導入を検討だわ。
それはそうとして、ひとまずこの状況をどうしよう。

すると、スマホが振動していることに気づいた。着信のようだ。取り出してみて、そこに和谷修二の名前を見つけて驚いた。
再会から一週間しか経っていない。なんだろう。

「はい」

おそるおそる出ると修二の声が聞こえる。

『陽鞠、忙しい時間帯にすまん』