身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています

それに、そんなことをしなくても、修二の美しい容貌を受け継いだ愛娘はずっと私の傍にいる。修二との過去を否定しないでいられるのはまりあのおかげ。

「なあんだ。焼けぼっくいに火がつかなかったかあ」

阿野さんは呑気だ。焼けぼっくいなんかしけっちゃっててなかなか火はつかないものよ。
すると、ゴミを片付けていたもうひとりのスタッフが顔を出した。大学生バイトの佐富(さとみ)くんだ。

「店長、阿野さん、サボってないで手伝ってくださいよ~」

今日は入荷が多いから講義が休講の佐富くんに来てもらったのだ。普段は遅番を務めてくれることが多い。

「サボってません~。手は動かしてます~」

阿野さんが小学生みたいな口調で言い返す。

「佐富くん、力仕事要員で呼んだんだから頑張ってよ~。高校時代ラグビー部だったんでしょ?」
「今はらくらくテニスサークルなんです。遊びでしか運動してないんで低体力なんですよ」
「それで花屋が務まるの~?」
「阿野さんの方が力あるかもですね~」

阿野さんと佐富くんがふざけて言い合いしているのを後目に、私も段ボールや梱包資材を集めて持ち上げた。入荷が多い分、ゴミも多い。

「あ、店長。俺が運びますよ」

佐富くんが私の手からゴミを引き取る。小柄でも、結構パワーはあるんだけどな。

「佐富くん、店長には優しいんだから」
「阿野さんにも優しくしてます。阿野さんが気付いてくれないだけで」

私はふたりに笑いかけた。

「ほらほら、十分後に開店ですよ。ふたりとも準備、準備」

今日も私は平和だ。昨日は非日常。
もう日常に戻ったのだから、いつまでも心に留める必要はない。私の毎日に戻ろう。