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和谷修二との出会いは大学時代だった。華やかで楽しいと評判のスポーツサークルの三年生が修二だった。
法学部のイケメン、みんなの人気者。陽気でちょっと三枚目なところもあって、女子も男子も彼が好きだった。だから、大学時代の私は、修二を遠くから眺めるだけだった。かっこいいな、素敵だな、なんて思いながら近づく勇気はない。だって、彼に選ばれたい女の子はたくさんいて、私程度のほのかな憧れじゃ、気合いの入った女子たちに並び立つ資格なんかないように思えたから。
一度だけふたりきりになれたことがある。学園祭の準備で、搬入する荷物の番をしたときだ。
私は憧れの先輩と一緒に居られるのが嬉しくて、同じくらい恥ずかしくて、とにかく早く運搬用のワゴンがくればいいのにと思っていた。居たたまれないという状況だった。
仲間からのスマホへの連絡を待ちながら、修二が言う。
『平坂と喋るの、久しぶりだよな』
久しぶり? ろくに喋ったこともないはずだけど。私の疑問顔を見て、修二が答え合わせみたいに付け足した。
『サークル勧誘の時、平坂に声かけたの俺だよ』
『え? あれ? そうでしたっけ?』
『そうだよ。覚えてろよ、おまえー』
修二が拳をぐりぐりと私の頭に押し込む。いきなりのスキンシップに驚き、さらに小柄な私は背が縮みそうでギャアギャアわめく。
『可愛いから声かけたんだよ』
可愛いなんて言われたことない。さらにそれが人気者の先輩からの言葉で、私はなんと返したらよいかわからず下唇を噛みしめた。



