身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています

それから数日、忙しかった五月が終わる日のことだ。
遅番勤務の終わり、お店を閉める作業をしていると、佐富くんに話しかけられた。

「最近、あの人の姿見ませんね」

あの人とは修二のことで間違いないだろう。私は意識していないふうを装って答える。

「もうまりあのことは両親に頼めるから」
「一緒に暮らしたいとか言われないんですか?」

阿野さんみたいなことを聞くんだから。でも、佐富くんは私に好意があって言っているので、意味合いが違ってくる。
少し考えた。やっぱり話しておくべきかもしれない。

「あのね、彼とやり直す方向で考えてるの」

佐富くんがわかりやすく表情を凍り付かせた。言っておかなければならない。好意を見せてくれた彼に、曖昧な態度はいけない。

「まりあちゃんのためですか?」
「それもあるけど、私の意志かな」

私はなるべく真摯に響くように答える。

「たくさん悩んで考えたけど、私が彼とやり直したいんだと思う」
「プロポーズは向こうからされてるんですよね」

佐富くんが私の顔を見つめ、険しい表情のまま言う。

「もしかして、まりあちゃんの親権を手に入れるためかもしれませんよ」
「え」

私はドキリとした。
そのとき、初めて思いいたったのだ。私たちが結婚するということは、社会的にまりあが修二の子どもであると認められることになるのだ。