五月が終わろうとしている。温暖化の影響か、日中は真夏のような暑さだ。花屋の店頭も明るい色の花で溢れ、夏を先取りしたみたい。

「店長、最近平和ね〜」

阿野さんが空いたバケツを片付けながらからっとした声で言う。

「年明けから怒涛の展開だったのに、すっかり落ち着いちゃって」
「確かにスタッフ不足で大変だったのが嘘みたいに落ち着きましたね。エリアマネージャーが戻ってきてくれたから、母の日関連がスムーズに片付いてよかったですよ。新人さんも、今は多店舗だけど、そのうちこっちにもシフトで入ってくれるっていうし。私も元の働き方に戻れてよかったよかった……」
「そ~じゃないでしょ」

阿野さんが口を尖らせ、ずんずん迫ってきた。
なんとなくそうかとは思っていたけど、彼女は私と修二の進展を聞きたいのだ。

「我が家でしたら落ち着いてますよ。この前もまりあと三人で買い物に出かけたんです。彼、まりあが欲しがるものなんでも買ってあげようとするから、近い将来まりあにとって都合のいい男に成り下がりますよ」

阿野さんはまだ不満げだ。求めている情報と違うらしい。

「だから~店長とパパの関係よぉ。燃えるような気持ちとか、思い出さないの〜? より戻そうとかさ〜」
「もう、妄想し過ぎですよ、阿野さん」

私は軽くいなす。
本当は、阿野さんにきちんと報告したい。でも、自分の身の回りがきっちり整理できたらにしようと思っているのだ。
修二の家を訪れたあの晩から、私は修二との復縁を真剣に考え始めていた。
まだ私の中だけだけど、この先のことを少しずつ……。