「突然泣き出してしまったり、ダンスを嫌がったり、お友達と喧嘩になってしまったり」

まりあの変化に私も驚いていた。
二歳児だって、みんな個性がある。泣き虫な子、元気な子、甘えん坊な子。まりあはマイペースで我が道を行くタイプだった。お友達とおもちゃの取り合いになっても譲ってしまうし、誰かに釣られて泣いてしまうこともない子だった。陽気で、ダンスや身体を動かすことが好きで……そんなまりあなのに。

「あの……パパのことは何か言っていましたか?」

意を決して尋ねると、先生の眉が少し上がった。

「そうですね。『今日はパパのおむかえ?』って保育士に聞いて回ることが何度かありました」

どうやら、我が家の複雑な事情を鑑みて積極的には言わなかったようだ。

「今日、お友達とトラブルがあったんですが。その子に『まりあちゃんのパパは?』って聞かれて。もちろん、その子に悪気はないんですが!」
「あのお友達に怪我とかさせてしまってないですか?」
「すぐに保育士が引き離しました。仲直りの握手はしました」
「……そうですか」

子どもは素直だ。ストレートだ。なんの悪気もなく放たれた友達の言葉はまりあの心をえぐったのだろう。
やはり修二にお迎えを頼むべきじゃなかったのだ。始めから『パパはいない』ならまりあもこんな思いをせずに済んだのに。
まりあの小さな世界からパパがいなくなった。それを他人に指摘され、我慢できなくなってしまったのだ。
すべては自分都合で中途半端な関わり方をしてしまった私が悪い。