身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています

十七時半、早番の勤務を終えて私はまりあを迎えに行く。

「おかえりなさーい」
「まりあちゃん、お迎えでーす」

保育士さんたちの明るい声が聞こえる。まりあは二歳児クラスの部屋で良い子に遊んでいた。

「まりあちゃのままだー」

はっきり喋るお友達の横で、まりあはマイペースに紙ちぎりをして遊んでいる。私を見ると片手をあげる。余裕ある態度だ。

「まりあ、ただいま」
「まあまー」

まりあはちぎった紙を私にあびせてきゃっきゃ笑った。それから、紙吹雪まみれの私の周りをくるくる踊りだした。

「まりあちゃん、今日読んだ絵本の真似をしてるんだと思います」

担任の先生は苦笑いしながら、私の頭の紙吹雪を取ってくれた。

「そうなんですね。まりあ、ダンス上手だねえ」
「らんす、らんす」

ダ行がラ行になってしまう舌ったらずさが可愛い。
まりあは言葉があまり早い方ではない。同級の子たちはまりあより低月齢の子でも、もっと喋れる子が多い。まりあはやっと二語文が出てくる程度。だけど、周りの言っていることは理解している様子だし、あまり他の子と比べずに大きくしてあげたいと思っている。
それに、ダンスや身体を使う遊びはクラスの誰より上手だしね……なんてついつい比べてしまうのも母心。