身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています

サンドイッチを口いっぱいに頬張っていた私は、反応が遅れた。本来ならバカでかい声で「はあああああ!?」と怒鳴るところだ。
目を白黒させながらもぐもぐやっている私に、矢沢さんはたたみかける。

「そうすれば、まりあちゃんと和谷先生は一緒にいられて幸せですし、今後の進路も選ぶ幅が広がるでしょう。なにより、陽鞠さんは身軽に第二の人生を始められるじゃないですか。お得意の英語を活かして復職もできるんじゃないでしょうか」

手足が震えるほどの怒りを感じた。
この女……いったい何を言っていやがるのかしら。
土足どころか重機で踏み荒らしに来やがったのかしら。思わず汚い言葉がいっぱい飛び出しそうになる。
目を見開いたまま、ものすごいスピードでサンドイッチを咀嚼し飲み込んだ。コーヒーをいっきに飲み干すと彼女に訊ねた。

「修二が弁護士の激務をこなしながら、……まりあをひとりで育てると……そういうことですか?」

怒りを押し込め、しかし目だけはギラギラさせながら私は問い返した。矢沢さんは自分の意見によほど自信があるのか、空気を読むのが苦手なタイプなのか、堂々とまくしたてる。

「もちろん、私も和谷先生をお手伝いします。私、和谷先生の将来のパートナーに立候補してるんですよ。先生は照れてるのか、あまりはっきりとお返事してくださいませんが、悪くは思っていないと思います」

すごい自信満々な主張だ。確かにかなり美人だし、スタイルもいい。年齢は私と同じくらいかちょっと上だと思う。だけど、私はこの人と同じくらいの美貌を持っていても、こんなふうに言えない。
修二ってば、やっぱり思わせぶりな態度取ってたんじゃないの? もしくは、この人がめちゃくちゃ思い込みの激しいタイプ?

どちらにしろねえ、私は怒っていますよ。