「いや、べつに、おまえのことが嫌いになったとかいうんじゃないよ」

なにも答えられず立ち尽くしたままでいるあたしに、大輔はあせったように言い訳をはじめた。

「だから、その、なんていうのか、おれもこんなだし、絶対こんなんさ、普通の生活じゃないしさ、昼も夜もかんけーなければ、クリスマスだって正月だってないし…………ああもうおれなに言ってんだろ。そんなことが言いたいんじゃないのに。そうじゃなくて、」

そこで言葉を区切って、大輔は大きくかぶりをふった。

「おれもうすぐ28じゃん。いろいろ考えるんだよ。おまえももう25だろ。いいかげん、おたがい身の振り方っつーの? 考えなきゃいかん年じゃねえ? 
おれはいいけど、おれはさ、男だから、でも女はあれだろ、なんだ、ほら、いろいろあるだろ。おまえのお母さんのこともあるし。

まあ、そんなん言ったらおれだってなんかいろいろあるのかもしれんけど、だからその、ほんと、これだけは間違えんといて。
べつにおまえのことが嫌いになったっていうわけじゃない。これだけはほんとだから。

っていうか、いや、なんていうか、そりゃあ好きだし、みたいな? どちらかって言ったら、そりゃあ好きだよ。好きでいっしょにいたんだから、あー好きだよ、好きだとも。おれはおまえが好きだ! あーもうだからおれほんとなに言ってんだろう。

…………だからさ、だからって、おれのわがままにつきあわすとなってくると、話はべつだろう。こんなんよくねえよ、ぜったいよくない。おまえはそんなんかまわんって言うかもしれんけど、おれはかまうんだよ。なんか、もう、ほんと、限界なんだ。いろいろ、つらくって、だから……」


なにを言ってんだ、この男は。


あたしはあきれた。

この男にあきれることはいままでもう何百、何千回とあったけど、そのぜんぶを合わせても足りないぐらい、あきれて、あきれかえって、めまいすらしてきた。