「教師が学校に飴なんて持ってきていいんですか」

「それな、誰かのお土産。たまに職員室に置いてあるんだよ。あ、やべ。これ多分言っちゃいけないやつだ」

「先生たちがわりと隠れてお菓子とか食べてんのみんな知ってますよ」

「大人には糖分を欲しないとやってられないことが山ほどあるんだよ」

私はもらった飴を口に入れた。じんわりと甘さが広がっていって、同時に浮遊感も落ちついてきた。

「先生ってさ、自分がモテるって自覚してるでしょ?」

「んーしてるしてる。だって俺、ずっとモテ期だし」

先生は冗談で言ってるつもりかもしれないけど、私には本当のことに聞こえる。

おそらく先生はずっとずっとモテてきた人だ。恋愛経験がほとんどない私でもわかる。

「ねえ、ひとつ聞いてもいい?」

「なに?」

「生徒に手出したって本当?」

その瞬間、いつも涼しい表情をしてる先生の顔色が少しだけ変わった。