……ああ、前原は昔からそうだった。生徒会長になった中二の秋から、いや、もっと前だ。初めて会った幼稚園児のころから。彼女は様々なものを一人で抱え込んだ。その小さな背中で沢山のものを背負っていた。

 『私がやるよ』『大丈夫』、笑顔でそう言う彼女を何回見ただろうか。きっと彼女は、ほかの人たちより少しだけ大人だったのだろう。ほんの少しだけ大人だったけなんだ。頼りなくて、弱くて、不器用な俺は、彼女の後ろをついて回るしかなかった。でも、それじゃ嫌だったんだ。俺は、俺は……

「前原の隣に並びたいんだっ。一人でそんなに抱え込むなよ。周りにもっと頼っていいんだ」

 いきなり立ち上がった俺に彼女は目を大きく見開いた。でも、あふれ出した言葉は止まらない。


「俺が何で副会長になったか分かるか? 会長を助けるために決まってるじゃないか。昔からいつもそうだった。なんで一人だけで前に行こうとするんだよ。今みたいに、一人で何回泣いた? そんなつらいことするなよ。俺も隣に並びたいんだ。並ばせてくれよ」


「……ごめん、ごめんね……」

 俺の剣幕に前原の目にはまた涙が浮かんでいた。
 違う、違うんだ。泣かせたいわけじゃないんだ。何て言えばいいんだ。彼女を笑顔にするためにはどういう言葉が必要なんだ。彼女の助けになるためにはどうすればいいんだ。分からない。

 ……不器用な俺にはいつも答えなんて分からないよ。

 でも。