お前は悪くないだろう。なんで俺に謝るんだよ。そんなに泣くなよ。
言いたいことは沢山あるが、泣いてる女子にかけるべき言葉なんて俺は知らない。

「……来い」

「えっ……、ちょっと、待って……」

 前原の手を引き、生徒会室に行く。ここが校舎の奥でよかった。こんな場面、誰にも見せられない。
 部屋の奥のパイプ椅子を引き、彼女を座らせる。俺も隣の椅子に、静かに腰を下ろした。

「……会長、校長先生と何かあったのか?」

 彼女が校長から説教をくらうなんてあるはずないが。

「……私の、ミスだったの。……そんなに怒られては、ないんだけど……」

 少しは落ち着いたらしく、ぽつりぽつりと言葉を発する。

「今度、他校との交流会が、あるじゃない……。出席確認とか準備とか遅れちゃって……、締め切りに間に合わなくて……」

 その時のことを思い出したのだろう。少し言葉を詰まらせた。

「……校長先生に迷惑かけちゃっただけ。それで、情けなくて……」

「そんなの、会長だけの責任じゃないだろう」

 交流会の準備は生徒会役員全員の仕事だ。前原だけが背負うことじゃない。全員で怒られるべきことだ。

「……でも、私、一応会長だから? やっぱり最後には責任取らないと」

 彼女はおどけたように笑って見せた。そんな笑みで、そんな弱々しい笑みだけで事を済まそうとしているのか。