「じゃあそこそこ不幸とは思っているって事ね」

 してやられた。

「・・・」

「さっきのは妹さんよね?」

「巻町さん、ハルキはどうしてノゾミを好きになったんですかね」

「ハルキって【妹恋】のハルキよね?」

「ええ」

 【妹恋】の主人公のハルキはふとした時に一つ下の妹であるノゾミに女を感じてしまう。

 妹とゆう存在に女を感じ、やがてその感情は彼の制御を離れてむくむくと膨らんで行く。

 ハルキはその感情を恋だと認められず苦悩し否定するも、想いは日に日に大きくなってしまう。

 ノゾミの何気ない仕草や、兄妹である事の気やすさから来る少し過剰なスキンシップに高鳴る胸の鼓動は『恋をしている』とゆう甘美なフワフワとした気分と、相手が血の繋がった妹だとゆう重い鎖を同時にもたらす。

 悶々とした日々を過ごしていたハルキは大学進学を期に家を出て、ノゾミから距離を置く事を決心する。

 ノゾミから距離を置く事で僅かながら落ち着きを取り戻すハルキだったが、1年後にノゾミが同じ大学へ進学してしまい、便宜上の理由で一緒に暮らす事になる。

 落ち着きを取り戻しかけていたハルキの想いが再燃してしまい・・・

 と、ゆうところで2巻は終わっている。

「何で、ね・・」

 巻町さんは思案しているのか、視線を少しだけ下げて口元に手をやった。

「きっと人を好きになるのに『何で』なんてないのよ」

「理由は無いって事ですか?」

「理由が無いって言うよりは、好きになったって事自体が理由なんじゃないかな」

「・・どうゆう意味ですか?」

「例えばそうね、私はカナタ君の事好きよ。高花先生ではなくてね」

「それは人としてのって事ですよね?」

「いいえ、男性として好意を抱いているって意味よ」

 その言葉の真意を探ろうと真っ直ぐに巻町さんの目を見つめてみたが、真剣な眼差しを返されただけで、目的の物は見えなかった。

「意味がわからないんですが。僕は今巻町さんに告白されてるんですか?」

「勿論よ。と、言っても別に彼氏彼女になりたいって言ってるわけじゃないから、それは今は置いておいていいんだけど」

「いや、それはちょっとスルー出来ないんですけど」

「話の本質がそれちゃうから、今はごめんなさい」

「あれ?なんか僕フラれたみたいになってませんか?」

「でね、私はカナタ君の良いところとゆうか、好きなところかな。を、言えって言われたら両手の指ぐらいはすぐに答えられる」

 イマイチ納得は出来なかったが、巻町さんはそのまま話を続ける。

「はぁ・・」

「でも、それって好きなところであって、好きになった理由ではないのよ。カナタ君は年齢の割に大人びてて、自然に人を思いやる事が出来る人。とても素敵なところだけど、素敵なだけなのよ。正直言うと、きっと似た様な長所がある男性は探せば結構居ると思う」

「まあ、そうでしょうね。人間の長所を表す言葉なんてそう多くはないですし」

「言葉の綾じゃなくて、あ、これは綾ちゃんの事じゃなくてね」

「わかっとるわ。あ、すみません、つい」

「まあ、言葉の綾じゃなくてね、外見もだけど性格も似てる人って多分結構いるんじゃないかなって事」