「どうゆう事だよ?」

「あの安易なアナグラム、高花流華の知名度の上昇に【妹恋】の内容、しかも貴方達今一緒に住んでるわよね?その状況で今迄ハルカにバレていない方が異常なのよ」

 綾の言葉は正論だった。

 実際に今迄何度かバレそうになった事もある。極力家では書かない様にしているが、締め切りが迫ったりするとそうも言っていられない。それこそパソコンを見られたら一発だ。

「バレてしまったら【妹恋】のあの描写は仇になる。コメディテイストにしても隠しきれない生々しさは、とてもじゃないけれど想像で書いたとは納得出来ないわ」

「・・それで、綾と付き合うのが何で僕のメリットになる?」

「既成事実を先に作ってしまうのよ、バレてからじゃ遅い。バレた時に既に私と付き合っているとゆう事実があれば、最悪の事態だけは避けられるわ」

 書き始めた時は軽い気持ちだった。商業作家になるつもりもなかったし、ネット上の顔も知らない読者が読んで、僕のこの気持ちを笑ってくれればほんの少しだけ気が楽になる。

 自分では抑えきれないこの想いを少しでも発散出来れば、そんな軽い気持ちだった。

「全部ただの物語だって、深い意味はなくてただの妄想だって言い訳出来るって事か」

「そうゆう事、いわば利害の一致による契約みたいなものと考えてくれたらいいわ」

 ハルカに僕の気持ちがバレたら、きっともう側にいる事は出来なくなる。元々、結ばれない事は承知の上だ。こうして居られるのも長くて大学の間だけだろう。

 卒業すればバラバラになり、たまに顔を合わせる事はあっても今の様に過剰とも言えるスキンシップを取る関係ではなくなる。

 いつかハルカも結婚して顔を合わせる機会も極端に少なくなる。

 滅多に会わなくなる。

 それでも、完全に会えなくなる訳じゃない。

 この気持ちがバレて会えなくなるぐらいなら

「わかった、契約成立だ」

 この選択が間違いだろうと、道を踏み外そうと

 ハルカの側に居られるならーーーー