次の日、早坂から告白をされたばかりだと言うのに、次は待ち合わせ場所の新宿駅で、葉月は翔のことを待っていた。

昨日は早坂とデートをしたことで、翔への気持ちが自覚できるようになった。

早坂を振ったことは罪悪感を感じるけど、翔のことが好きだと自覚した以上は、自分の気持ちをちゃんと伝えようと思っている。

 告白の返事をしたら、翔はどう言う反応をするだろう。

きっと翔のことだから、犬みたいに尻尾を振って喜んでくれるに違いない。もうハルじゃないから尻尾はないけどね。

葉月は翔の喜ぶ姿を想像して、期待に胸を膨らませた。

 やがて待ち合わせの時間になった。

翔はまだ来ない。いつもなら葉月よりも早く来るはずの翔が、待ち合わせの時間になっても来ないなんて何か変だ。

葉月は連絡が来ていないか確かめるために、スマートフォンの画面を開いた。

ラインがいくつか届いていたが、翔からの連絡は何もない。

 きっと珍しく遅刻でもしているのだろう。葉月は翔が来るまで気長に待ってみることにした。

 しかし、あれから十分、三十分、一時間が経っても翔は来なかった。

さすがにおかしいと思った葉月は、翔に電話をかけた。

「━━お掛けになった電話をお呼びしましたが、お出になりません」

スマートフォンから流れた音声を聞いて、やむなく電話を切った。

電話だけでなく、待ち合わせ時間を過ぎた辺りから何度かラインを送っているにもかかわらず、翔からの返事はまだ来ていない。

嫌な予感がする。

翔が葉月との約束を破ったことはこれまで一度もなかった。それだけではなく、これまでだったら待ち合わせ時間までに必ず連絡がきていた。

それが待ち合わせ時間を過ぎても来ないし、朝から今まで一度も連絡がないなんて。

急にどうしたと言うのだろうか。

考えられることとしたら、何かの事件に巻き込まれていたり、事故に遭っているとか━━。

そう思った途端、葉月の顔はみるみる青ざめていった。

(……どうしよう)

不安になった葉月は、翔の家に行って家を出たのかどうか確かめたいと思ったが、翔の家がどこにあるかわからない上に、翔と共通の知り合いで連絡先を知っている人は誰もいないことに気づき、行き詰まりを感じた。

もう自分には待つことしかできない。そう思った葉月は、翔が来るまで待ち続けることにした。

 その後、一日中同じ場所で待ち続けたが、結局その日翔がその場所に来ることはなかった。

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