「じゃあ……助けてくれてありがとう」


元はと言えば銀星のせいであんな目にあったのだが、一応はお礼を言っておく。


だが、そのまま歩き出した私の腕を、追いかけて来た銀星が強く引き寄せ、唇が重なった。


「……っ」


一気に鼓動が速くなり、私は銀星の胸にしがみついた。
しばらくそうしていた私達はようやく離れると、お互いの顔をじっと見つめた。


「美羽。お前は俺の女だ。もう誰にも触れさせねぇ」


似たような言葉を以前にも言われたことがある。
でも、同じ言葉なのに、今聞くと全く印象が違って聞こえた。
まるで私を全てのものから守ると誓っているかのようだった。


「……あ、私、もう帰るから……」


私は銀星から顔を背けて、赤くなった頬を隠すように家に入った。


家の中は相変わらず静かだった。
両親は仕事ばかりで家庭のことは放置しているので、今日あったこともわざわざ報告する気はない。
真っ暗なリビングには目もくれず、自分の部屋に入ってすぐにベッドの上に倒れ込む。


まだ足や腕が痛い。
でも、頭はすっきりとしていた。


そして、私に優しく触れてきた銀星の温もりを思い出す。


元々は、銀星を倒すつもりだったのに……どうしてこんなにややこしいことになってしまったのだろう。


そういえば、銀星はどうやって私の居場所を見つけ出したのか、聞きそびれた。
賢翔を問いただしたのだろうか。


そんなことを考えながら、私は目を閉じた。