そう自分勝手なことを言って、銀星は涙で濡れた私の頬に触れる。
私は隠すことを諦めて銀星の顔を見た。
銀星は私の目尻から流れる涙を指で拭うと、腫れた目元に優しくキスを落とした。


銀星にこんなに大事にされていると感じるのは初めてで、まるで恋人同士のようだなんて思ってから、馬鹿馬鹿しいと慌ててその思考を打ち消した。


だけど、結局銀星は私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。


*****


その後、私は銀星に抱きかかえられて保健室に運ばれ、手当てを受けた。
保健室を出ると、銀星は私の手を握って「家まで送る」と呟き、歩き出した。


道中は二人とも無言だった。
私は繋がれた手が気になったが、あまりにも当たり前のように手を握られたため、疑問を挟む余地もなく、まるでこうすることが私達にとって必然であるかのように感じられた。


「……もうここでいい」


家の近くまで来て、私は足を止めた。
銀星は名残惜しそうに私を見ていたが、やがて手を離した。
温もりが離れた瞬間、どうしてか寂しいと感じて、そんな自分が理解できなかった。