オオカミボーイフレンド

鈍い音がして、賢翔の身体が地面に倒れ込む。


賢翔は呆然と殴られた頬を押さえて銀星を見上げるが、銀星はそんな賢翔を氷のように冷たい目で見つめる。


「この女に手ぇ出すなって言ったよな」


「……でも……!」


納得がいかないのかなおも言い募る賢翔の肩を踏みつけて、銀星はおもむろに賢翔の耳元に顔を近付ける。


「俺に逆らうことは許さねぇ。いいな?」


有無を言わさぬ命令口調で告げると、銀星は先程までの冷たい雰囲気を消して私に向き直った。


「……怖かったか?」


「そんなわけないでしょ」


銀星の問いかけに食い気味に返して、私は散らばったお弁当の中身を拾い始めた。


「……そうだろうな。お前を怯えさせられるのは、俺だけだからな」


得意げな言い方が癇に障って、私が銀星を見上げると彼はすでに私達に背中を向け、堂々とした足取りで去っていった。