「あー、まぁ気にすんな。それよりさ、この間銀星がめちゃくちゃ荒れてた時あったじゃん?」


友幸は唐揚げを飲み込むと指についた油を舐め取り、私に向き直る。


「たまにああいう日があるんだけど、ああなると誰も手がつけらんねぇんだよな。でも、お姫様が出て行った後、あいつすっきりした顔しててさ。驚いたよ。まるで憑き物が落ちたみたいにいつものあいつに戻ってて、お姫様がなんかしたのかなって思ったんだけど」


「……別に、何も」


私はあの時のことを思い出したくなくて、静かに目を伏せた。


「ごめんな」


ふいに友幸が真剣な声で言った。


私が友幸を見ると、友幸はつらそうに眉を下げて笑っている。


「ほんとは銀星を止めるべきなんだろうけど……あいつがこんなにひとりの人間に執着するのは初めてだから、君の力でこのままあいつがいい方向に変わっていけばいいと思ってさ」


「変わる必要なんてないですよ」


今まで黙っていた賢翔が口を挟む。