すると、銀星が私の頬に手を添えて触れるだけのキスをした。
乱暴なキスしか知らない私は初めての感触に驚き、銀星を見た。
銀星は目を閉じて私の唇を優しく啄み、私は恐怖とは違う胸の高鳴りを感じて、そんな自分に嫌気がさした。


だが心とは反対に身体は銀星のキスを大人しく受け入れ、思わず銀星の背中にしがみつきたくなるのを懸命に堪える。


しばらくして、銀星は唇を離すと私の髪をそっと撫でた。
こんなに優しく触れられるのは初めてで、私は耐えられなくなって銀星の胸を押し、起き上がって教室を出た。
銀星は追いかけて来なかった。


銀星は私にとって憎むべき相手だ。


それなのに、ちょっと優しくされたぐらいでこんなに舞い上がるなんて、どうかしている。


最近の私はおかしい。


銀星といると、自分が自分でなくなっていくような気がする。
この気持ちの正体が何なのか理解しようとするのを、私は必死に押しとどめた。


知りたくない。


私の目的を果たすのに、この気持ちは邪魔だ。


「……私は、あんたを絶対に好きにならない」


自分に言い聞かせるように呟いて、私は歩き出した。