ふう、と深呼吸をして、乱れた思考を整える。
私は脳内から銀星の存在を無理やり追い払って、自分の教室へと歩き出した。


*****


それから、私はことあるごとに銀星に呼び出され、空き教室に連れて行かれた。


私を呼びに来るのは決まって友幸で、友幸は私を心配そうに見つめるが何も言わず、私は大人しく友幸の後をついて行った。


空き教室で銀星と二人きりになると、銀星は私を自分の隣に座らせて何をするでもなくぼんやり過ごしたり、たまに私に触れてきたりしたけれど、何故かそれ以上のことはしてこなかった。


私は銀星のされるがままになり、だが決して銀星と目を合わせなかった。それが、私に出来るせめてもの抵抗だった。


ある日、いつものように友幸が私を迎えに来て、彼の後について歩いていると、友幸が私を振り返って何か言いたげな視線を向けてきた。


「……何か?」


「いや……」


怪訝に思って問いかけるが、友幸は私から目を逸らすとそれきり口を噤んだ。
一体どうしたのだろう。
そのままお互いに無言で廊下を歩き、やがて空き教室に辿り着く。