「連れて来たぞ」


友幸と一緒に室内に入ると、ソファに腰かけて頬杖をついている銀星がちらりとこちらを見た。
昨日のことを思い出し、一瞬で身体が固くなる。


「じゃあ、俺はこれで」


友幸はそう言ってそそくさと部屋を出た。
その姿がドアの外に消えていくのを見送っていると、背後から「美羽」と名前を呼ばれて、ドキリと心臓が跳ね上がる。


いつの間にか、私のすぐ側に銀星がいた。
銀星は私の膝裏に手を添えて、軽々と抱き上げる。そのまま歩き出し、私の身体をソファに下ろして自分もその隣に座った。


「今日は抵抗しないのか」


されるがままになっている私を見下ろしながら、銀星が聞いた。


「大人しく言うこと聞く女のほうが好みでしょ」


私はなるべく感情を表に出さないようにして答えた。
銀星のすることにいちいち突っかかるから、向こうも面白がって私に構ってくるのだ。それに気付いた私は、逆に銀星に従順なつまらない女を演じて、彼の興味をそごうとした。