……どうして、私があんたのものにならなきゃいけないの。


そう言いたかったけど銀星の冷たい眼差しに射すくめられて、言葉が出てこない。
だがそれ以上に、銀星が一瞬切なそうな表情で私を見ていたことが気になって、頭ごなしに怒る気が失せてしまった。


なぜ急にあんな表情をするのだろう。私を油断させる気だろうか。


頭の中であれこれ考えても答えは出ず、銀星の本心を確かめるように見つめるうち、私は彼から目を離せなくなった。まるで吸い寄せられるように、銀星の瞳をじっと見上げる。


すると、銀星がふいに目を逸らし、私の上から退いて立ち上がった。
そのままドアを開けて教室を出て行く。


一人残された私は、木下のことを思った。


「……ごめんね」


そう呟いて、私は自分の愚かさを悔やんだ。
木下にはもう近付かないほうがいい。これ以上、傷付けたくない。


「……大っ嫌い」


吐き捨てるように言って、目を閉じた。